台湾の醤油の特徴や歴史
台湾の醤油は、日本の醤油と比べると、味は単純に言うと「甘め」です。
日本が台湾のお醤油を真似たのでしょうか。逆に日本のお醤油を真似たのでしょうか。
台湾の醤油の特徴や歴史は?
伝統製法で台湾の醤油を作る方と出会い、醤油のお話、工場、畑も見てきました。
まずは台湾の醤油の歴史から。
1649年、鄭成功が中国大陸から台湾に来た時、醤油の技術も持ってきたのが始まりでした。
当時は黒豆を使って作るのが主流でした。
1895年、日中戦争後当時の清政府が台湾を日本に譲渡し、日本統治時代がスタート。
太平洋戦争に突入すると物資不足から日本政府は便利で安定した供給ルートづくりを始めます。
地方大小をまとめ、様々な生活必需品工場を建てたうちの一つが醤油工場でした。
この時、日本の黄豆(いわゆる大豆)と、小麦を使った醤油の醸造法が取り入れられました。
そこで、
・黒豆醤油(別名:蔭油・壷底油)=台湾式
・黄豆醤油(正式:一般醤油) =日本式 という区別ができました。
また、少しとろみのあるお醤油が台湾ではよく使われていますね。
「醤油膏(しょうゆがお)」というものです。
これは、作り方は同じなのですが、最後にもち米粉等でんぷんを使用してあえてとろみをつけたものです。
なぜわざわざとろみをつけるのかお聞きすると、
「何か食べ物をつけて食べる時に、味が絡みやすいからだよ。あとは、ちょっとだけつければ十分味があるから節約にもなる。」
とのことでした。
日本のお醤油であえて言うならば、「たまり醤油(大豆95%小麦5%で仕込んだ醤油)」に近いかもしれません。
話はそもそも醤油の起源について少し。
醤油の元となっている「醤(ジャン・ひしお)」についての古代文献の記載は、3000年以上前からありました。
肉に漬けてでてきた液体「肉醤(にくびしお)」がそのはじめと言われます。今の醤油は豆を漬けて出てきた液体、いわゆる「穀醤(こくびしお)」のことです。なので、起源となるものは、今のものと全く違う味なのでしょう(なんせ肉をつけて出てきた液体ですからね。。。)。
昔の中国古代皇帝のご用達調味料であり大変貴重なものでした。
その香り高さから、徐々に民間でも知れ渡るようになり、日本はじめ東南アジア諸国に伝えられたと言われています。
(※日本の醤油の由来については諸説あり、中国渡来説と日本発祥説と分かれています)
どんな環境条件が醤油づくりに適しているのかというと、
この醤油にかかわる麹菌(アスペルギルスオリゼーもしくはソイエ)のよく活動する温度帯は25度から30度近辺。適度な湿度と、通年太陽光があるほうがよく発酵します。
台湾で有名な醤油醸造地である、雲林縣(台湾の中部地方)、特に西螺にはそばに大きな河川があり、水質がとても醤油づくりに適していると言われています。
なので、この辺りには台湾一の醤油生産地と言われるほど、たくさんの醸造蔵があります。
もちろん、台湾全土で醤油は作られていますが、伝統的な黒豆を使った台湾式醤油が多いのはこの地域。
180日しっかりと天然醸造された黒豆醤油は濃厚で、奥深い味と、ほんのり感じる甘みと香りが特徴です。
台湾の醤油も、伝統製法で作られたものは、‘’速醸法‘’という、機械でほんの数日(早いと3日)で大量生産される醤油と香りや味の違いは歴然としているんです。
ただ、日本が基本的に寒い時期に仕込み始めるのと違って、気温があがってから仕込みはじめるのが台湾の仕込みの基本のようです。
それは、台湾の気候が一年中湿度が高く気温も低くて中南部は15度程度、そこまで低くないので日本のように乳酸発酵優位にできる環境ではないからのようです。ですので、基本的に菌が元気に動く気温になってから仕込みます。180日という期間もこのことが関係していると思われます。
では、台湾の醤油の独特の甘みは何かというと、
一般的に、台湾で伝統的な製法で作られた醤油(黒豆・大豆醤油ともに)には、発酵させてできた醤油に、最後に糖分を添加して甘みをつけているのです。その糖分は砂糖、もしくは甘草(リコリス)が主流。最近、糖分を添加しない無糖醤油も、健康志向のために、独自に作っているところも見かけます。
塩分濃度は、台湾の醤油は日本の醤油より低いです。
下は10%から、上は15%~16%までと、ばらつきがあります。
(参考文献:関根一男,台湾における醤油の現状,1995)
ちなみに、日本の醤油の塩分濃度は下は12%(たまり醤油),上は18~19%(薄口醤油)ですから、相対的に高いですね。
だから、台湾の方は「日本の醤油ってしょっぱい」という声をよく耳にします。
台湾の方にとっては、甘みがあるお醤油に馴染んでいるので、余計にそう感じるのでしょうね。
日本の九州地方も甘口醤油が好まれているので、熱い地方は甘みをとることを体が欲していて、その結果の食文化の違いかもしれません。
今度は台湾のお醤油の工場を見てきた内容をレポートしようと思います♪
最後までお読みいただき、ありがとうございました★